あのいまいましいブリッジは? 

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『ブレイキング・バッド』 悪に突き進め!

『ブレイキング・バッド』の最後のシーズンである、フィフス・シーズンを観終えました。
あ~。

これはもう、ね……ああ、最っ高っ! ですね。
観てくださいよ、このドラマ。本当に。
麻薬のような中毒性がありつつ、一話を観終えるたびにひたすら尾を引く余韻性。
我が国ではさほど知名度が無いようでしたが、ここ最近になって徐々に浸透し始めてきたそうです。
非の付け所の無い脚本、魅力的で人間臭いキャラクター、ブラックな笑いどころも満載。
さまざまな賞を総嘗めにしたインモラルな世界を体感せよ!

タイトルのブレイキング・バッド(Breaking Bad)の意味は、悪に染まる、悪に突き進むといったニュアンス。
これで大まかなストーリーを想像することは決して難くない。
カタギがどんどんと、ワルに染まって行く。
スター・ウォーズ的に言うとダークサイドに堕ちて行く素晴らしいお話なわけですよ。

主人公は高校の化学教師のウォルター・ホワイト先生。五十歳になったばかり。
カリフォルニア工科大学を卒業した超優秀な科学者で、同期の親友と会社を起業するが、個人的理由で退職(この企業はのちのち、大企業となるんだけど……)。
んで現在は高校の先生。
慎ましいながら家族に囲まれ幸せな生活を送っていたが、末期の肺がんと宣告される。参った。
アメリカの公立学校の教師の給料はひどく安く、国民医療保険が無い(『シッコ』で観た!)。
だから癌の治療となるととんでもなく高い治療費がかかる。
長男は生まれながらの脳性麻痺。軽度の言語障害と運動機能の障害を抱えているものの、親の血筋か頭は良い。
だから大学に行かせてあげたいが、アメリカの大学の学費はとんでもなく高い。
そんでもって奥さんは妊娠中である。
自分が癌で死んじまったら、残された家族は苦労する。これでは困ると。なんとかしたいと。
残された余命で何とか、家族のために残してやりたい。お金を!

つーわけで、ホワイト先生は覚せい剤を作ることになります。
奥さんの妹さんの旦那さん(つまり義理の弟)は麻薬取締局で働いており、なんとなくその現場に付き添わせてもらい、そこでなんとなくかつての教え子ジェシーが覚せい剤の製造をしていたことを知り、なんとなく相棒として組むのですね。
クリスタル・メスと呼ばれる覚せい剤は、市販の風邪薬から抽出されるメタンフェタミンから精製することができます。
アメリカでは各地でカタギの仕事をやる傍らで覚せい剤を作る副業をしている人がいたり、生え抜きのギャングがヤク市場を牛耳っていたりするのですが、作る連中のブツってのはどれもこれも、せいぜい純度五十~六十パーセント。
化学のプロであるホワイト先生が本気を出してメスを作れば、それは純度九十九パーセント。最高のブツです。
そりゃ麻薬市場はホワイト先生のブツに飛びつきます。
当然といえば当然の成り行きなんだけど、地元のギャングに目をつけられてしまうのですね。

どうにかこうにか地元のちっぽけなギャングどもをかわすが、これは只の序章に過ぎぬ。
そのうちアメリカ西南部の麻薬流通を牛耳る大物マフィアや、メキシコの麻薬カルテルとの麻薬戦争にも巻き込まれ、
生き残るために、更なるお金を掴むために、先生と相棒ジェシーは奮励するのです。
予期せぬストーリーに、ブラックなコメディが見事に絡み、ドラマはどんどんスピードアップ。
どんどんと良からぬ方向に突き進むことになります。
観ている側は「これ以上はやめろー!」とまだ引き返せる状況であると、引き止めたい心情にかられつつも、「いいぞ、もっとやれ!」と、どこかで悪に堕ちて行くホワイト先生を応援してしまう背反性に戸惑ってしまう。だが、面白い!

ドラマを観ていると、どうもホワイト先生に感情移入をしてしまう。
冴えない生活を余儀無くされた、これまでの人生を知っているからというのもあります。
自分と共に起業した同期の友人は、今や大企業の社長でリッチに暮らしている一方で、才能がありながらも安月給の高校教師をしている劣等感。
高過ぎるアメリカの医療費のためどうしても……というのもあるでしょう。
とにかく弱者に厳しく、自己責任的なアメリカ社会の犠牲者であるとも思うのです。
いや、犠牲者という表現は的確では無い。社会が生み出した怪物とでも言うべきか。
表現訂正をしたのだけど、怪物なる表現も違う気がする。ホワイト先生は悪に染まっても人間であったのです。
家族は大事に思い、自らを誇示したいプライドの高さもあるし、悪いことをしようとするにもいつだってビビっている。
それに、自ら手を下すことには抵抗があるようだった。
自ら手を下した時の、申し訳無さを伝える慌てようを見ると、こう思った。悪になりきれてないし、人間であると。
正真正銘、徹頭徹尾、ホワイト先生は人間です。どれほどの罪を重ねようとも、です。
罪を重ねて悔み、「仕方が無かった」と必死に自分に言い聞かせてもいました。
だから悲しい。どうしようもない憐憫を感じます。


『ブレイキング・バッド』を全部観たことによる喪失感が物凄い。
だけど劇中に登場する主要キャラクターの悪徳弁護士ソウル・グッドマンのスピン・オフが来年に放送予定と知る。
これは嬉しい! たまらない!
まだまだ『ブレイキング・バッド』の世界を楽しめるのです。

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いずき

Author:いずき
ミスカトニック大学で人類学を専攻している学生です。
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ほしいもの:等身大ボイド人形

自慢できること:赤ん坊の頃のオルセン姉妹を見分けられること

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